1月26日から放映しているLINEの新CMは、もうご覧いただけましたでしょうか?

▼現在放送中のCM3作品がまとめて見られる120秒バージョン
 

2011年に続いて、今回もCMを担当していただいた博報堂クリエイティブディレクターの河野良武さんと、弊社執行役員、LINEのマーケティング責任者の舛田に、今回のCMの狙いと制作の裏側、そして今後の目標について語っていただきました!

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●今回のCMは、コミュニケーションそのものの宣伝かもしれない

河野:1億ユーザー達成の直後に、今回のCMがはじまりましたが、2011年の前作から数えると出会って1年数か月、だいぶ濃い時間を過ごしてますよね。
今回は、「通話アプリやメッセンジャーアプリ云々ということではなく、スマートフォン時代のコミュニケーションブランドを創る」という狙いの元、企画がスタートしたのが昨年の12月頃でした。

舛田: LINEが、今多くの方に使っていただいている中、さらに多くの方に使っていただくうえで大事なのは、ブランドとして確立できるかどうか。一過性のものじゃなくて、皆さんのそばにあるブランドとして愛していただけるかだと思うんです。今回はまさにそこを目指した。手応えはありますよね。新規ユーザーのところもきちんと数字が出ているので、すべてうまくまわっていると思いますね。

河野:結果が出ているというのが何より嬉しいです。前作は、新しいコミュニケーションアプリのデビューでした。狙いは、「感情の最大化」。いきなりの本質的訴求でしたね(笑)。ベッキーさんにテレビで彼女が見せたことのないレベルで「泣く」「笑う」を演じてもらいました。
今回描いたのは、劇団という設定を通して、今を必死に生きている仲間達のコミュニケーション。仲間が、真面目にコトバと気持ちを伝えあう風景。「コミュニケーション」そのものの宣伝かもしれないですね。

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●LINEが伝えるのは、言葉じゃなくて気持ち

舛田:前作は、インパクトを出すことで、世の中の認知を得ることを狙っていましたが、今回は、LINEが置かれている状況も、CMの狙いも全く違います。今回の設定である演劇って、観るとワクワクしますよね。あと、人間感がすごくある。それは、LINEに近いと思うんです。あと、今回の「LINEやってるよね」「LINEしてくれたんだ」という、日常的にユーザーによって使われている言葉を使おうというのは、いろいろ考えたなかでいい着地だったなと。ユーザーと離れてないというか。ユーザーにとってのLINEの価値を表していると思います。改めてお聞きしますが、コミュニケーションのプロフェッショナルである河野さんから見て、LINEの持っている価値ってなんだと思いますか?

河野:LINEの価値については、これからも一緒に考えつづけさせてください(笑)。
ただ、ひとつは、スタンプという「気持ちの象形」が、「コトバだけでは伝わらない」という生活者の問いに見事に解答したんじゃないでしょうか。そして、情報社会に、「伝えたかったのは、実は、気持ちだった」と気付きを与えた。
例えば、今回のCMの設定じゃないですが、舞台で役者が表情や声で伝えたいのは、実は台詞とは裏腹な本当の気持ちなんです。
 
情報の裏でお互いの固有の想いを伝え合うことが、コミュニケーションの本質なんだと思います。相手の感情を想像するしかない従来のメールは、一般の人にとって扱いづらい面もありますよね。
しかも、スタンプには、従来の顔文字と違い、伝えたい感情の切り分け・文節化する力があります。同じ「嬉しい」でもどう嬉しいのかが、網目細かく選べる。LINEのメインキャラクターのムーン、彼の表現力は秀逸ですよね(笑)。
 
コトバの真意は、豊かな感情表現と組み合わせたときのみ正確に伝わります。そのことが、コミュニケーションの質を上げる。LINEでコミュニケーションすると優しくなれるんですよ。
だから、LINEで「負」のコミュニケーションをしている人って圧倒的に少ないと思うんです。コミュニケーションを信じない・拒否する人が増えているのは、気持ちがちゃんと伝わらなかったトラウマからじゃないでしょうか。もっと悪いのは、もともと気持ちのないコミュニケーションで、孤立社会をも生んでいますけどね。LINEがここまで支持されているのは、そこに対してのアンチでもあるんじゃないでしょうか。気持ちがちゃんと伝われば、人と向き合うことが、楽しくなるんですよね。LINEは、グローバルに、コミュニケーションそのものの信頼性と重要性を上げていくと思います。

舛田:今回の、「人は、つながって、生きている。」というキャッチコピーは壮大ですけど、でも本当に、自分は自分で、他人は他人で、でも、みんながコミュニケーションでつながっていると思う。CMの世界観の幹になる大切な言葉です。

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●信頼があるから、一緒に無呼吸で走り続けられる

河野:舛田さんはじめLINEのCMチームの方々は全撮影、全編集に立ち会っていましたよね。そこに、プロダクトとしてのLINEのスピード感や、納得がいくまでやりこむ精神、真摯な姿勢が垣間見えた気がしました。

舛田:撮影のプロセスや温度感を知っておいて納得したもの作りをしたいんですよね。webサービスも、CM制作も同じです。全力を尽くして妥協しないのが大事だと思ってます。
我々の会社のカルチャーとして、誰かに任せきらないというのがあって。何周も何周も議論して、シンプルなところに着地させる。考えた分だけよくなるし、話した分だけよくなる。それをスピーディーにやる。今のテレビCMチームとは、一緒になって“無呼吸で”走り続けてる。セッションしている感じ。今も変わらず一緒にやれているのは、信頼の一言だと思います。もちろん苦労もさせてますが。(笑)

河野:苦労は、常に今、苦労してますね。(笑) 一番大変だったのは、「Vコンテ※見てみましょう」と言われたとき。スケジュール的には来週見なきゃいけない、となると、どう考えても今週中に3本撮影しなきゃ間に合わない。それこそ何度も考えて決まった企画で、具体的に見たいぞとなって、Vコンテ制作したのに、見てみたら、「ちょっと違うぞ」となって、その企画がなくなって。あれはほんと、大変だったなあ(笑)。
(※Vコンテ=ビデオコンテ。 CMの企画書である絵コンテにもとづいて制作した仮の映像)
 
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●目指すはカンヌ、そして舞台やドラマへ

舛田:それぞれ違う楽器を鳴らしてますけど、心地良いプロセスでのセッション感がありますよね。空気がいいなと思ってます。
この前、打ち上げの席で言った“カンヌ”もどこかのタイミングで一緒にチャレンジしたいことの一つですね。我々のサービスは世界各国で使っていただいているので、多くの方にLINEの存在を伝えられるというマーケティング的な意味もありますし、何より、クリエイティブをやっている人間として目指したいというのもある。LINEのCMがカンヌを獲ったら、ユーザーの皆さんにも誇らしく思っていただけるんじゃないかと(笑)。

河野:あとは、このチーム、そして演者たちでリアルな舞台、やってみたいですね。今回もWEB限定篇(今後、LINE公式WEBで公開予定)とかでいろんな小劇団の方に出ていただいたりしてますけど、劇団に所属している若者たち、これから生きる力をもってがんばっていこうと思っている人たちを応援できるといいなと思っています。

舛田:そうですね。舞台でもドラマでも、なんなら映画でも。視聴者の皆さんの声があればあるほど盛り上がりますし、あとはキャストの皆さんの盛り上がり、そして我々チームも。新しいCMが次々作られる勢いでワーッてやってしまうというのはあるかもしれないですね。このチームだといろいろチャレンジできると思ってます。またすぐに次の撮影も入ってますしね。まだまだ、一緒にがんばりましょう!


河野良武
株式会社博報堂
クリエイティブディレクター
TCC会員、準朝日広告賞、ニューヨークフェスティバル・ゴールドなど受賞多数。
女性を美しく撮ることに評価が高い。演劇などのコンテンツプロジェクトも主導。